長いもは一年を通して出回っているイメージがありますが、いも類なので、もちろん旬があります。第一の旬は収穫時の秋です。そして、もう一つの旬は春。春が旬の長いもは、いもが大きく育ってから収穫する秋とはちょっと違います。では、春に収穫される長いもは、どんな長いもなのでしょう。
長いもの収穫は春と秋の2回。1年を通して味わうことができる
長いもはいも類なので、旬は秋の終わりごろ、というイメージがありますが、実は秋だけでなく、春にも旬があります。つまり、長いもは1年のうちで旬が2回あるという、珍しい野菜なのです。
長いもの料理で思いつくのが定番のとろろそば、マグロの山かけ、麦とろ飯、短冊、お好み焼きをはじめ、バター焼き、漬け物など、いろいろなメニューでお目にかかりますが、どれも季節限定のメニューというわけではありません。長いもの旬が春と秋にあるおかげで、私たちは1年を通して長いも料理を味わうことができるというわけです。
秋にあえて掘り出さずに土中で越冬。それを春に掘り起こして出荷
青森や北海道では、長いもの植えつけはだいたい5月上旬~中旬に行われます。そして、初雪が降る10月下旬~11月下旬ころに掘り出され、冷蔵庫などで貯蔵して、順次出荷されます。この時期に出回るのが“秋掘り”の長いもです。
しかし、秋の収穫時にすべてを掘り起こさずに、一部はそのまま土の中で越冬させます。土の中で保存すると新しい芽が生えてしまいそうですが、秋に成熟した長いもは一定の間休眠しないと発芽しません。このような性質を利用して、寒い冬の間に土の中で休眠させて保存します。
長いもを土の中で長期保存するためには、地下の温度が温かすぎてもダメ、土が凍ってしまうほど低すぎてもダメ。1~2℃くらいで保存するのがちょうどよいとされています。
冷涼な地方で冬の間、適度な温度で保存された長いもは、雪解けがはじまる3~4月に掘り起こされます。収穫しないで土の中に残された長いもは、ほぼ成熟状態のまま保存されているので、春に掘り起こされるときには、秋の長いものおいしさをそのまま味わうことができるのです。
春掘りの長いもの収穫が終わるころには、次の長いもの植えつけがはじまります。春に植えて秋に収穫し、一部を春まで保存、そしてまた春に収穫…。このように、長いもは、いわば“無限ループ”のようなサイクルで栽培されています。
春掘りは粘りが強く旨みが凝縮。秋掘りは皮が薄くジューシー
春の長いもはとろ~り、ねっとり!!
秋の長いもは、地上の葉が自然に枯れたころ、完熟の状態で掘り出しますが、この時期の長いもは、とれたての、新ジャガならぬ、いわば“新長いも”。みずみずしくてジューシー、アクが少なく、皮が薄いのが特徴です。
一方、土の中で低温で保存された長いもは適度に熟成されるため、いろいろな成分が凝縮され、旨みが増します。コクがあり、濃厚な味わいとなり、秋に比べて粘り気が強くなるので、とろろに出汁を混ぜた麦とろ飯などに向いています。
長いもの大生産地である北海道は青森と違い、冬に土が凍ってしまうため、土の中で保存する春掘り長いもの生産は難しいといわれていました。しかし、最近は凍らない工夫がされ、十勝や留寿都(ルスツ)などで春掘りもさかんに行われています。いも類は普通、加熱してからでないと食べることができませんが、長いもは生で食べることができる珍しいいも類です。今、春掘り長いものちょうど旬。とろろや短冊はもちろん、漬け物やバター焼きなどにアレンジしたりして、今年もおいしい長いもを味わいたいですね。
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