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大饗祭 探訪

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とっぷりと日が暮れた午後6時。広大な鎮守の森の闇の奥で、神々が集う宴が

関東の東の端に位置する千葉県香取市。冬の差し迫る夜、巨木が林立する亀背山(かめがせやま)の森に囲まれた香取神宮(下総国一ノ宮)の神殿で、ひっそりとある宴が開かれます。招くホストも神なら、ゲストもすべて神。神無月の出雲に集い、帰郷した東国の神々が、東国鎮護のために居残っていた香取神宮に祀られる武神・経津主大神(ふつぬしのおおかみ)のもとに集い、経津主と姫神によってお疲れの神々をねぎらう宴と伝えられます。神官により特殊神饌が正殿に次々に運び込まれ、若武者装束の大和舞が奉納されます。かがり火の中、執り行われるその厳粛な神事は「大饗祭(たいきょうさい)」と呼ばれます。

 

 

 

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もてなしの品は唯一無比?不思議な神饌(みけ)の数々

 

 

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下総国一ノ宮・香取神宮本殿。桧皮葺きに黒い柱の重厚な社殿は、かつてはもっと大規模だったとも

律令制が成立して以降の奈良時代から江戸時代までの長い長い期間、「神宮」を称することを許されていたのはたったの三社、伊勢神宮鹿島神宮香取神宮のみでした。『延喜式』(927年)では摂津の住吉大社、下総の香取神宮常陸鹿島神宮に20年に一度の正殿の遷宮・造替と、神税に拠出することが明記されています。
香取神宮には年間90を超える恒例祭事が行われ、中でも4月に利根川に神船を繰り出す神幸軍神祭や、5月に二日間にわたって行われる日本三大御田植祭に数えられる御田植祭、十二年に一度、午年に行われる鹿島神宮との共同の式年神幸祭などがとりわけ有名で、それらの華やかな祭りと比べると、かつては神無月晦日(旧暦10月30日)、現在は11月30日に行われる「大饗祭」は、祭囃子も屋台の出店もなく、一切の俗性を排除した闇の中で、ひっそりと進行します。その様式は古式にのっとるともいわれ、少なくとも600年以上の歴史があると伝えられています。

午後六時、漆黒の闇の鎮守の森の中、神宮本殿境内にかがり火がたかれ、神饌(みけ)殿から本殿へと神々へのご馳走が次々と運ばれていきます。その数は三十九台。お神酒、餅、干魚、千切り大根や柚子、海草、サケの胎子、フナやナマズなどの川魚などの中でことに目を引くのが雌雄対のマガモを調理した鴨羽盛です。水郷地帯に多く飛来するマガモを捕え、内臓・肉を取り出してから聖護院大根を土台にして頭部・脚。羽根、胴体を再びつぎあわせて、羽根を広げて飛び立っているかのような姿に整形したもので、日本の祭事の神饌では他に例を見ないめずらしいものです。さらに、フカ(サメ)肉を土台にして周囲に鮭の切り身をタワーのように高く盛り付けた鳥羽盛が四台。そして、大人二人で担ぎ上げて運び込まれる「大みけ」こと巻行器(まきほかい)が十六台。行器(ほかい)とは、円筒型もしくは角型の食べ物を運ぶ蓋つきの容器で、出前のオカモチのようなもの。雛人形の道具類に見られるものです。普通は木製で漆塗りですが、巻行器とはこれを水郷に繁茂する真薦(まこも)を、巨大な丸い籠状に編み上げたものです。この巻行器16台に4斗(1斗が10升なので40升)の蒸し米が盛りこまれています(1基の巻行器に2.5升)。かつては、神宮にお目見えになる東国三十三ヶ国(近江をのぞいた東山道北陸道東海道の諸国合わせて32ヶ国、これに志摩をあわせたものでしょうか)の鎮護の神の数にあわせ、三十三の巻行器が用意される壮観がみられたそうです。神饌は儀式後に氏子に下ろされて直会(なおらい)で供されることになっていますが、数が16になったのはあるいは今の日本人がかつてよりお米を食べなくなったせいで、大量の蒸し米をもてあますことになったからかもしれません。
 
 
 

 

 

 

 

 

 

細やかな香取神宮の祭事は何を意味する?

 

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武の物部氏と文化殖産の忌部氏に祀られた香取の宮の清清しい参道

祭儀、地元の若者による若武者装束の大和舞の奉納の後、見学者たちは社殿にあがり、間近でこれらの神饌を見学できる時間が設けられ、撮影も自由です。
なお、「大饗祭」の一週間後の12月7日には団碁祭(だんきさい 八石八斗団子祭とも)が行われます。両祭はセットで、こちらは神酒の奉納がない特殊な祭りで、新穀で作った団子を奉納し、参加者に団子がふるまわれ、その団子には無病息災の効能があると伝えられます。神酒が捧げられないことからこの祭りは、大饗祭で神々をもてなした香取の姫神を慰労する祭りであるとも言われています。
香取神宮の祭りはこのように繊細で心遣いにあふれた優しい印象のものが多く(もちろん、鴨羽盛や鳥羽盛などからは、古代武力王権の荒ぶる野性味を髣髴とさせますが)、祭神である剣の神であり武勇並ぶ者のなき軍神であるはずの経津主大神のイメージとの落差にとまどいます。
 
 
 
 
 

 

 

 

 

香取と鹿島、古事記日本書紀の関係に見られる不思議な類似性

 

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本来の表参道は、利根川から伸びる道でした

香取神宮鹿島神宮利根川下流域を挟んで向かい合うように(本殿の向きは互いにそっぽを向いていますが)約13kmほど離れて鎮座し、ともに武神であり、武芸の神として、道場の神棚の掛け軸に左右に両神の名が記されるのも通例(宮下文書では香取神を兄、鹿島神を弟としています)で、特に香取神宮兵法三大源流のひとつ、天真正伝香取神道流を創始した飯篠家直(いいざさいえなお 1387~1488年)が武芸の真髄に開眼したゆかりの場所であり、飯塚は深く経津主に帰依していました。

香取と鹿島の両神宮が、権力を掌握する藤原氏氏神として地位を向上させた、ということは先述したとおりですが、これは藤原氏が中臣氏と称していた時代、常陸にくだった中臣鎌足が鹿島神を奉じ、後に奈良に春日大社を築造した際に鹿島の神を勧請したことに発します。
もともとは鹿島神宮香取神宮藤原氏の神ではなく、それ以前にこれらの神を奉じていた祭祀氏族は、鹿島は多氏(おうし 大、太、意富とも)、香取が物部氏忌部氏であったとする説が有力です。多氏出身の太安万侶は『古事記』の編纂者。「記紀」と並び称されるものの、『日本書紀』は正式な国史で、公文書なのに対し、『古事記』は、藤原不比等に献上された私家版書物(秘書)で、身内以外には出回らないファンタジーでした。双子のように扱われる両書はまったく性質の異なる書物なのです。何やらこれは、ときに同一神とも兄弟神ともされる鹿島、香取の神が、実はまったく異なる神であることと、不思議に符合します。

鹿島・香取の神の神話における最大の見せ場は葦原中国の平定(出雲の国譲り神話)の段ですが、記紀の記述は大きく異なります。『日本書紀』では、多くの異伝を併記しつつも、出雲平定の最高司令官は剣の神・経津主で、これに雷神である武甕槌(たけみかづち)が副官として随行したとしています。かたや古事記では、経津主は登場せず武甕槌(『古事記』表記では建御雷神)が単独で出雲平定に赴き、抵抗する建御名方神(諏訪明神)を叩きのめして謝らせた、という武勇談が語られます。この違いは何なのでしょうか。

古代日本で長く軍事権を掌握していたのは物部氏でした。よってその氏神である経津主は、正史である『日本書紀』では司令官に選任されます。しかし武甕槌も軍神として控えめに役を割り振られます。一方私的読み物である『古事記』では、多氏と藤原氏は、彼らの奉じる武甕槌を主役として大活躍させ、おおいに楽しんでいた、ということなのでしょう。
香取の神は、古代東総地域において大きな勢力を有する神で、このため畿内から下った物部氏、四国から海で渡り、南房総から北上しながら勢力を広げてきた忌部氏はともに香取の神を奉じました。古代に祭祀を担う一族だった忌部氏との関係から、香取の神は別名「斎主(いわいぬし 伊波比主命)」とも言われます。

香取神宮の祭りに見られる洗練性、奥ゆかしさ、繊細さは、高い文化・殖産の能力を有していた忌部氏により育まれたものだとも考えられます。香取神宮の第一摂社で、奇祭「髭撫で祭」で知られる側高(そばたか)神社は、その祭神について表向きは造化三神を祀るとしながら、本当の主祭神は秘匿とし、「言わず語らずの神」としています。しかし、高=鷹とするならば、下総、東武蔵に多い忌部の祖神・天日鷲命(あめのひわしのみこと)である可能性は濃厚です。

香取・鹿島神宮、そして香取・鹿島とともに東国三社を形成する息栖神社を巡って語るべき謎についてはまだまだあります。いずれ改めて詳しく取り上げたいと思います。
 
 
 

 

 

 

 

 

 

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香取神宮の神鹿。この他地震を鎮める要石、日本三大名鏡・海獣葡萄鏡など、境内には見所が多くあります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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