フェーン現象とは
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フェーン現象は2種類 その原理
フェーン現象は、どのような原理で起こるのでしょうか。
フェーン現象には2つの種類があります。「ウェットフェーン」と「ドライフェーン」です。
まず、典型的なフェーン現象「ウェットフェーン」は、熱力学メカニズムによって起こります。
空気は上昇すると気温が下がりますが、この下がり方は乾いた空気と湿った空気で異なります。
乾いた空気は、100m上昇するごとに1℃の割合で気温が下がります。一方、湿った空気は、上昇し水滴に変わる際に熱(潜熱)が放出されるため、乾いた空気よりも気温の下がり方が小さくなり、100m上昇するごとに0.6℃の割合で気温が下がります。
空気が下降するときは反対で、乾いた空気は、100m下降するごとに1℃の割合で気温が上がります。
模式図で見ていきましょう。
風上側のふもとの気温が25℃とします。湿った空気が上昇するときは100mあたり0.6℃気温が低くなるため、2000mの山を上昇すると、頂上付近の気温は13℃となります。山を上昇する際、湿った空気は水滴に変わって雨となり、頂上付近の空気は乾いた空気となります。そして、乾いた空気が下降するときは、100mあたり1℃気温が高くなるため、2000mの山を下降すると、風下側のふもとの気温は33℃となります。この結果、風下側のふもとの気温は、風上側のふもとより8℃も高くなります。
フェーン現象が起こりやすい地域と季節は
一方、「ドライフェーン」は、日本海側だけでなく、太平洋側にもフェーン現象をもたらします。太平洋高気圧が西に張り出しを強め、本州付近で北西の風が吹くと、太平洋側でドライフェーンが起こりやすくなります。夏の記録的な暑さは、ドライフェーンが関係していることが多くあります。
また、フェーン現象は、季節にかかわらず1年中起こります。ただ、冬はもともとの気温が低く、フェーン現象により気温が上がってもあまり目立ちません。高温が際立つのは春から秋にかけてで、このため、この時期に発生しやすいと感じられています。
過去の事例
【2020年9月3日新潟県三条で40.4℃】
台風9号から変わった温帯低気圧が日本海に進み、低気圧に向かって吹く南よりの風が山を越え、北陸や東北の日本海側を中心にフェーン現象が起こりました。台風9号に伴う暖かい空気が本州付近に流れ込んだことも影響し、最高気温は、新潟県三条市で40.4℃、新潟県胎内町中条で40.0℃と危険な暑さになりました。2024年7月31日時点で、新潟県三条市の40.4℃は9月の全国最高気温となっており、また、9月に40℃以上を記録したのはこの事例のみです。
ドライフェーンにより太平洋側で高温となった事例です。
【2020年8月17日静岡県浜松市で41.1℃】
太平洋高気圧に覆われて、西日本から東日本は広く晴れて強い日差しが照り付けました。高気圧の中心は九州の西にあり、北西の風によって、いくつもの山脈・山地を越え暑くなった空気が山を吹き降り、静岡県でフェーン現象が起こりました。太平洋高気圧より上空のさらに高い所でチベット高気圧に覆われたことも影響し、静岡県浜松市では最高気温41.1℃を記録しました。2024年7月31日時点で、全国最高気温(2018年7月23日埼玉県熊谷市で41.1℃とタイ記録)となっています。
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まとめと注意点
春のフェーン現象は、日本海に進む低気圧によって日本海側で起こりやすく、季節外れの高温をもたらします。春先に起これば、積雪の多い地域に雪崩を引き起こすことがあります。また、まだ体が暑さに慣れていない時期に急に気温が上がると、熱中症にかかりやすくなるため、注意が必要です。
夏から秋にかけてのフェーン現象は、日本海側だけでなく、太平洋側でもよく起こります。夏は太平洋高気圧から吹き出す西よりの風によって太平洋側でフェーン現象が起こり、災害級の高温をもたらすことがあります。また、台風シーズンには、台風から変わった低気圧が日本海へ進む時や、台風接近時に、日本海側でフェーン現象が起こりやすくなり、高温をもたらします。40℃前後の危険な暑さになることもあり、熱中症には厳重な警戒が必要です。
そのほか、フェーン現象による異常な高温は、水稲の品質を低下させたり、家畜が死亡したりするなど、畜産業にも影響が及んでいます。
フェーン現象がもたらす異常な高温は、ときに命に係わる危険があるため、十分な警戒が必要です。
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