産卵のためにたくさんのエサを食べることで脂が乗る冬のブリ。お鍋に入れたり煮つけにしたり、寒さが染み入る季節にはたまらない食材ですよね。家庭の食卓にもたびたび登場するブリですが、その生態やブランド寒ブリの種類など、あまりよく知らないという人も多いのでは。今回は古来、日本人に馴染みのあるブリの魅力について迫ってみました。
ブリの基本情報をおさえる
漢字で書くと魚へんに“師”と表すブリ。師走(12月)の頃に旬を迎えるためこの字が使われたという話をよく耳にしますが、実はこれ俗説だそうで、名前の成り立ちについては諸説あります。魚体の形や切り身にしたときの赤身の色あいから、はたまた、尾をぶら下げて持つとぶらぶら揺れる様子から「ぶり」と名づけられたなど、確かなことはわかっていません。
また、ブリが出世魚であるというのは有名ですが、成長度合による名前の変化を正しく知っている人は意外と少ないのも事実。主に関東では体長※15~30cm程度のものをワカシ、※30~50cm程度のものをイナダ、※50~60cm程度のものをワラサと呼び、概ね※60cm以上のものをブリと呼んでいます。(※おおよその目安)
これらの呼称が全国的に同じなのであればまだ覚える気にもなりますが、関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリといったようにエリアによっても名前が変化するというややこしさ。おまけにフクラギやガンドといった北陸地方特有の呼称もあり、結構複雑なお魚さんなのです。
ちなみに、ブリは北陸から山陰地域での水揚げが多いため日本海に生息する魚と思われがちですが、沖縄を除く日本各地の近海に生息しており、北海道から九州まで各地の漁港で水揚げされています。分類上ではスズキ目アジ科ブリ属に属し、同属のヒラマサやカンパチは親戚にあたりますが、両者が世界中の温帯から熱帯海域に分布しているのに対し、ブリは東シナ海から日本列島周辺の限られた水域にしか生息しないため、日本固有の魚と言っても過言ではありません。
ブリは養殖漁業の代表格!養殖ものと天然ものの味の違いも知ろう
それに対し、天然ブリは文字通り自然の中で育ったブリをさします。厳しい自然界を生き抜いた天然ブリは脂の乗りもよく、美味しくて最高!と思われがちですが、実はそんなこともありません。旬の時期以外の天然ブリはスラっとした体つきをしていて体脂肪は少なめ。また、養殖ものと違い大海原を泳ぎ回るため身の締まりが強く、柔らかい身を好む人からは敬遠されることも…。
一方で養殖ブリは一年を通して脂乗りが良く、柑橘類を混ぜたエサを与えるなどして臭みを抑えているものも出回っています。養殖ものの方が癖がなく「甘くて美味しい!」と感じる人が多いのはこのためだそう。シーズンによっては、天然ものよりも高値で取引されることも少なくありません。
じゃあ養殖のブリで十分じゃないか!と思う人もいるかもしれませんが、ここに割って入ってくるのが冬に旬を迎える“寒ブリ”の存在です。
天然ブリは冬を迎える前に越冬と産卵のため、エサを活発に食べてデップリと太ります。通常期のブリがお腹の部分のみに軽くサシが入るのに対し、背中までびっしりとサシが入るのが旬を迎えたブリの特徴です。そして、脂をため込んだ冬のブリを漁船で水揚げしたものが“寒ブリ”と呼ばれる代物です。うま味たっぷりで脂が乗っているにも関わらず、身はしまっていてブリンブリン!これこそが天然寒ブリの特徴で、冬にしか味わえない高級魚たる所以。また、寒ブリは生活習慣病の予防効果があるとされるEPAやDHAが豊富で、抗酸化作用のあるビタミンEも豊富に含まれている優秀な食材でもあります。
そんな寒ブリの存在を全国に知らしめたのが富山県の氷見漁港で水揚げされる「ひみ寒ぶり」。“富山湾の定置網で捕れた6kg以上の寒ブリ”で、なおかつ“形、質ともに良い”など様々な基準をクリアしたものだけがひみ寒ぶりとして認定されます。そして、ひみ寒ぶりの美味しさの理由はその恵まれた漁場にあるといわれています。冬になると産卵のために北海道から九州・東シナ海まで南下するブリですが、氷見はちょうどその中間地点にあり、脂の乗りが最高潮に達したブリを水揚げできる環境にあるのだそう。
誰もが一度は口にしてみたいひみ寒ぶりですが、近年ではひみ寒ぶりに負けない近隣のブランド寒ブリがあるので、いくつかをご紹介します。
・新潟県佐渡市=「佐渡一番寒ブリ」。佐渡ヶ島にある両津湾内の大型定置網で漁獲し、船上で血抜きをしたのち海水氷でしめられた10kg以上、脂質15%以上の寒ブリ
・石川県珠洲(すず)市~七尾市=「天然能登寒ぶり」。石川県珠洲市から七尾市にかけて富山湾に面した海域の定置網で水揚げされた7kg以上の寒ブリ。脂身の脂含量は30%を超え、刺身にすると醤油をはじくほど
・福井県美浜町=「若狭美浜寒ぶり・ひるが響(ひびき)」。美浜町の日向(ひるが)漁港で11月下旬~1月に水揚げされるブリのうち、重さが8kg以上で形が優れた寒ブリ。生きたまま漁港の水槽で4~5日泳がす“活け越し”を行い、身の透明感、鮮度が増す「血抜き」「神経抜き」をするなどの基準がある。同漁港に水揚げされる寒ブリのうちこの基準を満たすのはわずか1割程度
今年こそは寒ブリを食べるぞ!と息巻いているあなた。
各ブランドの選定基準などを参考に品定めしてはいかがでしょうか。
美味しい寒ブリの見分け方とは?
天然寒ブリというだけでどれも美味しいのですが、購入する際はより鮮度が良いものを選びたいもの。良質な寒ブリの見分け方は以下の通りです。
1.腹に張りがあり表面が青く輝いている
2.エラの内側が鮮やかな紅色をしている
3.切り身は断面につやがあり光沢がある
4.血合いが赤く鮮やかで黒ずんでいない
そして寒ブリの美味しい食し方と言えば、その甘みを最大限に感じることができるお刺身です。
まずは火を通さずにぜひ生で召し上がってみてください。また、熱を加えることで風味が増すのもブリの醍醐味。最近ブームに火が付いた「寒ブリのしゃぶしゃぶ」もおすすめの食べ方です。定番の照り焼きやブリ大根にしてももちろん美味しいですよ。美味しい寒ブリをいっぱい食べて、寒い冬を乗り切りましょう!
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