3月も中旬になり、もう、桜が咲いている地域もありますね。土手にはツクシやタンポポなど、春の野草が芽吹いています。ところで、「ツクシは大きくなったら何になるのだろう」と考えた時、「ツクシ誰の子 スギナの子~♪」という歌を思い出す方はいらっしゃいませんか。でも、ツクシが大きくなると、本当にスギナになるのでしょうか。実は、ツクシとスギナは単なる“親子”ではなく、ちょっと変わった関係なのです。
ツクシとスギナは同じ地下茎。早春、ツクシが先に出てくる
「ツクシ誰の子 スギナの子~♪」という歌は、宮城県地方で伝承された歌や、「つくし」というタイトルの童謡で耳にしたことがある方も多いと思います。筆者も親戚が「ツクシ誰の子 スギナの子~♪」と口ずさんでいたのが耳に残っていて、ツクシが成長するとスギナになるのか…とぼんやりと信じていました。
でも、ツクシの姿と、それが成長したとされる、あの緑色のスギナの姿が、どうも結びつきません。実は、歌の歌詞とはちがって、ツクシが成長してもスギナになるわけではないのです。
ツクシはスギナと同じ地下茎から出てきますが、ツクシとスギナは時期をずらして、ツクシのほうが先に出てきます。そして、スギナが出てくるころにはツクシはほぼ枯れてしまいます。つまり、ツクシという種類の植物があるわけではなく、スギナ“本体”が生えてくる前に、同じ地下茎から先に出てくるものが、ツクシとよばれているのです。
では、このツクシはスギナの何なのでしょう。
ツクシはスギナの「胞子茎」。繁殖のために胞子を飛ばす
スギナはシダ類なので、花は咲きません。種子ではなく胞子でふえる植物です。春になると地面の下に伸びている地下茎からは、スギナ本体ではなく、先にツクシが生えてきます。このツクシが胞子を飛ばす役割をはたします。
ツクシはスギナの「胞子茎」で、早春になるとぐんぐん伸び、10~15cmほどに成長します。ツクシの頭、つまり“筆の先”にあたる部分には、緑色の胞子がたくさんつまっていて、気温が上がってくるといっせいに胞子が飛び出していきます。煙のように吹き出した胞子は風に乗ってあちこちに飛んでいき、胞子を飛ばし終わるとツクシは役目を終えて枯れてしまいます。
スギナは「栄養茎」。光合成して栄養分を調達する
ツクシが枯れるころになると、同じ地下茎から今度はスギナが顔を出します。ツクシとはまったく違う外見で、全体的に緑色です。杉の木の先端のように見えること、そして、ツクシが食用とされることから、「杉の菜」、転じて「スギナ」と名づけられたともいわれています。
スギナは高さ30~40cmほどに成長します。先に出るツクシは「胞子茎」として繁殖を担いますが、スギナは「栄養茎」として光合成を行い、養分の調達を行います。
スギナは繁殖力が旺盛で、庭や畑に一度生えてしまうと、毎年毎年ふえ続け、どんどん“勢力”を広げ、手がつけられないほどになってしまいます。ツクシは食用、スギナは生薬としても用いられますが、庭や畑にとってはありがたくない雑草として嫌われることもあります。
ツクシが大きくなって、スギナになるわけではない
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